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「なぜ水やりをしなければならないか?その意味は?農学的視点から解説」でお話ししたように、植物は土壌溶液と呼ばれる養分が溶け込んだ水を吸収して水分と養分を得ています。
そして、この土壌溶液は、土壌粒子と土壌粒子の間に吸着される形で存在していて、その土壌溶液に溶け込んだ養分は土壌粒子からやってくるわけですが、どうやって養分は土壌粒子にくっついているんでしょうか?
今回は、養分が土壌粒子にどのように吸着され、土壌に保持されているのかをお話しします。
目次
養分は電気的引力によって土壌粒子に吸着されている
はじめにイメージ図を見てもらいましょう。
このように、養分は電気的引力によって土壌粒子とくっついています。
電気的引力ってなに?
ではまず、電気的引力とは何か?というところから説明しましょう。
電気的引力とは、プラス(+)とマイナス(ー)が引き合うことで生じる力のことです。
さきほどの図を見てみると、プラス(+)とマイナス(ー)が引き合って土壌粒子に養分が吸着していますよね?
そうなんです。実は、土壌粒子や養分はそれぞれ電荷をもっているために、このようなことがおこるんです。
ではどのような仕組みで、土壌粒子や養分は荷電をもっているのか?ということなんですが、土壌粒子と養分では荷電をもつ仕組みが全く違います。
養分が荷電をもつようになる仕組みをこれから説明します。
土壌粒子が荷電をもつようになる仕組みは「安定した永久荷電と不安定な変異荷電とは? 土壌粒子が荷電をもつようになる仕組みを解説」で解説しています。
養分が荷電をもっているのは、イオンの状態で存在しているため
ここから少しの間、ちょっとした化学の時間です。
みなさん、イオンという言葉を聞いたことはありますか?
イオンとは物質が水に溶けたときになっている状態のことです。
例えば塩。
化学式で表せばNaClですが、水に溶かすとNa⁺とCl⁻に分かれます。
溶液中に存在するNa⁺やCl⁻のような状態がイオンで、Na⁺のようにプラス(+)の荷電をもつものを陽イオン、Cl⁻のようにマイナス(ー)の荷電をもつものを陰イオンといいます。
陽イオンになるか陰イオンになるかは物質によって決まっており、物質の持つ性質によって決まります。
※詳しくは化学の内容になりますので、このブログではおそらくこれ以上は触れません。ごめんなさい。
ここで本題に戻りますが、
植物の養分も同じで、土壌中の水に溶けて土壌溶液となっているということは、イオンの状態になっていることです。
そして、つぎにお話することにも絡んでくることなんですが、植物の養分となるものはプラス(+)の荷電をもつ、陽イオンが多いです。
その理由は、先ほどチラッとお話したように陽イオンになるか陰イオンになるかは物質によって決まっていて、植物の養分は陽イオンになるものが多いからです。
一方で、土壌粒子は主にマイナス(ー)の荷電をもっています。
その理由は、土壌粒子が荷電をもつようになる仕組みのところで触れるので、ここでは説明しません。
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土壌には養分を保持する力がある
養分が土壌粒子に吸着されることが意味するのは、土壌には養分を保持する力があるということにほかなりません。
そして、先ほどお話ししたように、植物の養分のほとんどは水に溶けるとプラス(+)の荷電をもつ陽イオンです。
ということは、土壌粒子にマイナス(ー)の荷電があればあるほど、たくさんの養分を吸着することができるということになります。
陽イオン交換容量=土壌が養分を保持できる力
実は、土壌がどれだけ養分を保持する力があるかを数値で表すことができるんです。
それは、陽イオン交換容量(CEC – Cation Exchange Capacity)とよばれ、単位重量の土壌がもつマイナス荷電の総量をあらわしたものです。
その名の通り、主に植物の養分となる物質は陽イオンになることが多いため、どれだけの陽イオンを保持できるかをあらわしています。
したがって、陽イオン交換容量の大きい土壌は、土壌粒子にマイナス(ー)の荷電がたくさんあるため養分保持能力が高く、農業において大いに役立つのです。
陽イオン交換容量の大きい土壌=農業に有利!
下の図を見てください。
陽イオン交換容量の大きい土壌は、土壌粒子が多くの養分を吸着させているので、養分が水に流されてしまう心配はありません。
そのおかげで、植物は水を介して養分を吸収することができます。
したがって、このように陽イオン交換容量の大きい土壌では、土壌粒子が多くの養分を保持してくれるため、与える肥料の量を少なくすることができます。
つまり、土壌の陽イオン交換容量が大きければ大きいほど、農業に有利に働くということになります。
一方で、陽イオン交換容量の小さい土壌では、陽イオン交換容量の大きい土壌とは相反することがおこります。
陽イオン交換容量の小さい土壌=農業に不利…
下の図は、陽イオン交換容量の小さい土壌の場合です。
陽イオン交換容量の小さい土壌では、土壌粒子が養分を吸着できる量が多くありません。
そのため、吸着されなかった養分は水に流されてしまい、植物は水を介して養分を吸収することができなくなってしまいます。
つまり、このような土壌で肥料をあげても、養分の大半が流されてしまうので、植物が正常に生育するためには余分に多くの肥料を与えなければいけません。
これには肥料のコストがかかるだけでなく、環境にも悪影響を及ぼすことになります。
※肥料が与える環境への影響はまた別の記事で詳しくお話しします。
このように、陽イオン交換容量の小さい土壌は、農業をやる上で不利に働くことが多いです。
まとめ
今日の話の要点は2つ!
- 植物の養分は電気的引力によって土壌粒子に保持されている。
- 土壌が養分を保持する力を数値で表したものを陽イオン交換容量といい、これが大きいほたくさんの養分を保持することができるため、農業に有利。
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農学部に通う大学生。農学の知識を発信していきたいという思いと、自分の力で稼いでみたいという思いをもってブログを書いてます。趣味は音楽鑑賞、一人旅。日本各地の温泉を巡るのが夢。