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土壌と聞けば、多くの方は土をイメージされることと思います。
しかし、土壌とは何でしょうか?という質問に対して‟土”と答えたならば50点です。
確かに、土壌の見た目は土そのものですが、その構成はとても複雑。
土壌は、たくさんの要素が絡み合って形成されたものなのです。
また、土壌の持つ役割もひとつだけではありません。
土壌は植物を育てる役割をもっているだけでなく、私たち地球上の生命を支える役割も担っている大切な存在なんです。
…なんだか、土壌は単なる‶土”ではなさそうな気がしてきませんか?
というわけで今回は、
- 土壌とは何か?(その定義)
- 土壌を構成しているもの
- 地球における土壌の位置づけ
についてお話しします。
土壌とは何か?(その定義)
はじめに、土壌の定義を説明しますね。
土壌には以下のような定義があります。
土壌とは「岩石が外界の影響によって物理的あるいは化学的な風化作用を受け、それに動物や植物の遺体が加わり、さらにその遺体が土壌生物の作用を受けて互いにまじりあい、一体となり、その与えられた影響で安定した状態(平衡状態)に移りつつあるか、平衡状態に達した自然物」である。
出典:土壌学の基礎
小難しいことが書いてありますが、要はこういうことです。
下の図を見てください。
つまり土壌とは、岩石が環境条件(水分・温度)や生物の影響を受けながら長い時間をかけて生成したもののことを言うんです!
しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。
それは、ガーデニングで植木鉢に詰める土や、プランターで植物を育てる際に詰める土は土壌と呼んでいいのかということ。
答えは、NO(ノー)です。
一方で、田んぼや畑の土は土壌と呼びます。
この違いは何なのか?
そこには本質的な違いがあります。
その本質的な違いとは、環境条件や生物との相互作用があるかどうかです。
田んぼや畑の土は、農場の囲いこそあれど、周りの生態系と連続しています。ということは、環境条件や生物との相互作用があることになります。したがって、環境条件や生物に変化があると、それに応じて土壌の性質も変わっていくのです。
一方で、植木鉢やプランターに詰められた土は、いわば周りの生態系から隔離された状態にあるわけです。つまり、環境条件との相互作用が起こりにくいのはもちろん、生物との相互作用が特に起こりにくい状態にあるので、土の性質が変わることはほとんどありません。
したがって、田んぼや畑の土と、植木鉢やプランターに詰められた土ははっきりと区別しておかなければならないのです。
土壌を構成しているもの
先ほどの話を踏まえると、土壌は複数の要素から構成されていることが想定できます。
その土壌を構成している複数の要素は大きく分けて5つあります。
それは、無機物、有機物、水、空気、生物の5つ。
土壌はこれら5つの要素が複雑に絡み合ってできているのです。
土壌を構成している無機物とは、主に土壌のもととなる岩石のことで、有機物は主に動植物の遺体が長い時間をかけて分解されたのちに集積したもので、私たちはこの有機物を利用して食べ物を生産しているわけです。
※土壌の有機物をどのように利用して食べ物を生産しているのかは、また別の記事で詳しくお話しします。
ちなみに、土壌を扱う学問分野では、土壌を構成する5つの要素を大きく分けて三相に分類しています。
その三相とは、無機物と有機物を合わせて固相(こそう)、水の部分を液相(えきそう)、空気の部分を気相(きそう)の3つです。
図にするとこんな感じ。ちなみに気相と液相を合わせて間隙(間隙)といい、この比率は常に変動します。
※詳しくは別の記事でお話しします。
それではつぎに、私たちの暮らす地球において、土壌はどのような位置づけにあるのかを見ていきましょう。
地球における土壌の位置づけ
土壌が存在する=地球上の生命が存在する
土壌は、農業においてなくてはならない重要な存在であるだけでなく、私たち人間を含めたすべての生き物たちの命を支える重要な存在でもあります。
土壌は私たちに食べ物を供給してくれるだけでなく、炭素資源の貯蔵をしたり、有害物質を浄化したりするなどの役割を持っているのです。
土壌のもつ役割についてはまた別の記事でくわしくお話ししますが、土壌が重要な役割をもっていることを分かりやすく理解していただくために、食物連鎖を思い浮かべてみてください。
食物連鎖は、一般的に食う・食われるの関係をあらわしたものだと捉えられています。
しかし、それ以上に重要なのが、食物連鎖が起こることによって物質の循環が行われ、地球上の生命が生存できていることです。
図を見てもらえればわかるように、食物連鎖の要は、無機物から有機物を作り出す生産者と、有機物を無機物に分解する分解者です。
そして、これら生産者と分解者のはたらきは、土壌がなければ成立しません。
これは土壌のもつ役割のひとつにすぎませんが、土壌があるおかげで私たち地球上の生命は生きていくことができるということが分かっていただけたかと思います。
地球の皮膚が、私たちの生命を支えている
そして、特に重要なのは表土と呼ばれている部分です。
土壌はいくつかの層に分かれているのですが、最も地表面に近い表土が、先ほどお話しした土壌の役割をほとんど担っているのです。
つまり、表土はたくさんの有機物が含まれており、私たちに食べ物を供給してくれるだけでなく、炭素資源の貯蔵をしたり、有害物質を浄化したりもしているということになります。
農業において‟土”と呼んでいるのは、この表土のことを指すわけですね。
そして、驚くべきは表土の厚さ。
表土の厚さは地域によって大きく異なりますが、およそ数cm~数mの幅で存在しています。
表土の厚さを地球全土で平均すると、なんと約18cm弱になります。
つまり…
地球の直径が12,700㎞なので、表土の厚さは地球の直径の1億分の1の薄さということになります。
つまり、人でいう皮膚のような薄い膜ほどのものによって私たち地球上のすべての生命は支えられているのです。
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まとめ
今日の話の要点は3つ!
- 土壌とは、周りの環境条件や生物との相互作用を受けた結果生成されたものであり、ガーデニングに使用されるような土とは性質が異なる。
- 土壌は複数の要素で構成されており、その要素とは有機物・無機物・水・空気・生物の5つである。
- 土壌はいくつかの層に分かれているが、そのうちの表土は、地球の膜のような厚さでありながら地球上の生命を支えている重要な役割をもっている。
今回はお話ししませんでしたが、現在土壌は人間の不適切な管理によって劣化が進み、深刻な問題となっています。
この話についてもいずれ詳しく解説していきたいと思います。
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農学部に通う大学生。農学の知識を発信していきたいという思いと、自分の力で稼いでみたいという思いをもってブログを書いてます。趣味は音楽鑑賞、一人旅。日本各地の温泉を巡るのが夢。