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生産力という言葉は、さまざまな分野で使われています。
これは、農業においても同様です。
今回は、農業における生産力についてお話ししようと思います。
はじめに生産力を構成する要素に分解し、それぞれの要素は何をあらわすのかを説明します。
その後、これらの要素が生産力にどのように関係しているのか?生産力を上げるためにはどうすればいいのか?をお話ししていきます。
農業における生産力
農業における生産力とは、ひとりの働き手が1年の間にどれだけ生産できるかを具体的な数値としてあらわしたものをいいます。
生産力は↓のように分解することができます。
生産力
=生産量÷労働力
生産量も↓のように分解することができます。
生産量=作付け面積×単位面積当たりの収量
つまり、生産力は
生産力
=生産量÷労働力
=作付け面積÷労働力×単位面積当たりの収量
=作業処理能力×単収発揮能力
とあらわすことができます。
このように、生産力や生産量を分解してあらわすことで、これらに直接影響している要素を知り、またこれらを上げるためにはどうすればいいのかが分かりやすくなります。
作業処理能力とは?
先ほど示したように、作業処理能力と作付け面積の関係は、
作業処理能力=作付け面積÷労働力(人)
とあらわせました。
労働力とは働き手の人数のことなので、作付け面積が大きく、働き手の数が少ないほど作業処理能力が高いということになります。
作業処理能力を高めるには、農業機械を導入するのが有効です。
たとえば日本におけるお米の栽培では、イネの作付けは田植え機という機械で行っているところがほとんどです。
イネの田植えを手作業で行っていた時代は、一つの田んぼを複数人で手分けして作業しなければなりませんでした。
また、イネの苗をひとつひとつ手作業で田植えしていくのは農作業のなかでも重労働であり、作業効率は決して良くありません。
それにひきかえ田植え機を導入することによって、ひとりの働き手によって田植えを短時間で終えることができるようになっただけでなく、面積が倍以上ある水田の田植えもひとりでこなすことができるようになったのです。
このように、農業機械を導入することで作業の効率化が図れ、ひとりの働き手が手掛ける作付け面積を大幅に大きくすることができます。
これが、作業処理能力を高めるための方法です。
また、作業処理能力を高めることは、労働生産性を上げることにも直結します。
労働生産性についてはまた詳しく説明したいと思います。
単収発揮能力とは?
単収発揮能力と単位面積当たりの収量との関係は、
単収発揮能力=単位面積当たりの収量
です。
単収とは、単位面積当たりの収量のことを指します。
なぜこのふたつがイコールなのかは、両者が何に焦点を当てているかを考えるとわかりやすいです。
単収発揮能力は土地や作物に焦点を当てたもので、単位面積当たりの収量は作物の収穫量に焦点を当てたものと考えてください。
たとえば、ある水田におけるイネの単位面積当たりの収量が25kg/aだとしたら、その水田とイネにはそれだけの量を生産できる力(単収発揮能力)があることになります。
※農地面積をあらわすのに使われるa(アール)やha(ヘクタール)については、
「1ha(ヘクタール)は何㎡? 農地面積によく使われるa(アール)やha(ヘクタール)について」
をご覧ください。
図を使った方が分かりやすいと思うので、図で説明しますね。
↓のように面積が10aの農地が二つあったとします。(絵が雑ですみません(笑))
右と左の農地、どちらが単収発揮能力があると思われますか?
それは間違いなく右の農地ですよね。
では、左の農地を右の農地のように単収発揮能力を高めるためにはどうすればいいのでしょう?
先ほども言いましたが、単収発揮能力はその土地と作物に焦点を当てたものです。
ということは、左の農地の単収発揮能力が低い原因は土地か、作物か、または両方にあるということです。
もし、左の農地の単収発揮能力が低い原因が作物にあるならば、栽培する作物を品種改良して、雑草に強くしたり、養分をよく吸収できるようにしたりすることが必要になります。
このように、単収発揮能力を上げるためには原因が土地にあるのか、作物にあるのか、はたまた両方にあるのかを分析しなければいけないということです。
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生産力を上げるのは単純に見えて単純じゃない
ここまでの話をまとめると、
・生産力は作業処理能力と単収発揮能力に分けられる。
・作業処理能力を上げるためには、農業機械を導入して、作業効率をよくする必要がある。
・単収発揮能力を上げるためには、土地に肥料を与えたり、作物を品種改良する必要がある。
つまり、生産力を上げるためには、それぞれ作業処理能力と単収発揮能力を上げるための処置をとる必要があるということになります。
ところがですね。
実際はこれほど単純ではありません。
作業を効率化するために農業機械を導入したら、結果的に作業処理能力と単収発揮能力の両方が上がったということも起こりうるのです。
たとえば、今まで人の手で土地を耕していたところ、農業機械を導入して土地を耕す作業を機械化したとします。
その結果、人の手で耕すよりも短い時間で、かつより大きな面積を耕すことができるようになりました。
これは作業処理能力が上がったことになります。
ところがそれ以外にも、土地を耕すのに機械を使うことによって、人が耕すよりも深く耕すことができるようになりました。
そうすると、土地がより多くの肥料を保持することができるようになり、単収発揮能力も上がる結果に(^^)
・・・なんてこともあります。
つまり、生産力は作業処理能力と単収発揮能力に分解できるとはいえ、それぞれの要素が独立しているわけではなく、互いに影響を及ぼし合っているということです。
また、両者にいいことがあることばかりではなく、品種改良の結果、単収発揮能力は上がったものの余分な作業が増え、作業処理能力が下がってしまうこともあるのです。
このように、生産力を上げるためにはただ作業の機械化や品種改良をすればいいという単純な話ではありません。
その結果どのような影響がでるのかを考えなくてはいけないのです。
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農学部に通う大学生。農学の知識を発信していきたいという思いと、自分の力で稼いでみたいという思いをもってブログを書いてます。趣味は音楽鑑賞、一人旅。日本各地の温泉を巡るのが夢。